スマートグラスを活用した園地情報の伝達・共有化に関する実証報告

RSS購読


大阪府環境農林水産部農政室は2021年3月、ZVC Japan株式会社の協力により、スマートグラスを活用した園地情報の伝達・共有化に関する実証を実施しました。

【実証の背景】
大阪府内では、ぶどうやなすをはじめとする「大阪産(もん)農産物」が各地で生産されています。
しかし高齢化等により生産者が減少しており、農業において農作物の栽培技術をこれからの担い手等に伝えていくことは、今後の農業の継続、食料安定供給に向けて大きな課題となっています。
農業生産における作業のタイミングは、経験と感覚によるものも多く、大阪府では作物の葉の色、茎の伸び、しおれ、土壌の乾き具合等を園地で直接作物を見ながら、追肥や水やりの時期や量、整枝、芽かき等の指導を行っています。的確な指導のためには、指導者が直接その場に行く必要があることから、時間的なロスも大きく、また複数者への同時指導、情報の共有化が難しい状況があります。
そこで今回、ZVC Japan株式会社協力のもと、園地情報の伝達・共有化に関するスマートグラス活用の有効性を検証する実証を実施しました。

【使用場面】
・スマートグラス装着者によるぶどう園地での芽かき作業
・園地の作業者に対する園地外からのパソコンモニターによる指導

【試用結果まとめ】
●装着者の感想(40代女性)
「スマートグラス側の画面を注視すると目が疲れるため、高齢者の使用は難しい」

●PC側で見た感想
「指導者が同じ画面を見ているため、電話を通じた指示は的確に行うことができる」
「園全体の状況は分かるが、画面上で病害虫の被害状況(茎や葉の変色)を確認するのは難しい」
「装着者が細かく動くと画面が揺れて見づらいため、動きをしっかり止めておく必要がある」

●園地の農業者からの聞き取り調査
「関係者がPCを通じて現地園地を確認し、また質疑に参加することで、現地へ伺う人数を絞り込みつつ高度な情報共有を図ることができる可能性がある」

 

以上のことから、スマートグラスの利用場面としては、改善すべき複数の項目はあるものの、画面共有しながら口頭での作業指示とヒアリングについては利用可能であることがわかりました。

日々の作業指示にスマートグラスを利用するためには、通信環境、画面の見やすさ、手ぶれ補正等の改善が必要であると考えられるものの、遠隔での情報伝達、共有化で、農作業を効率化することができる可能性があります。
環境農林水産部農政室では、「大阪産農作物」栽培技術の継承に向け、今後もさまざまなスマート技術の利用検討を進めていきます。