デジタル面会導入プロジェクト 座談会 PJストーリー

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堺市では、令和2年4月22日から、市内の介護等施設や障がい者支援施設、児童養護施設を対象に、タブレット端末を貸し出す取組を新たに進めることで、テレビ電話などにより、入所者と家族等が、お互いの顔を見ながら会話できる環境整備を支援し、「しゃべる」機会の確保、高齢者のフレイル予防、入所者と家族等の寂しさやストレス、不安の軽減を実証するプロジェクトを行いました。
本実証にかかわったプロジェクトメンバーの思いをインタビュー形式でまとめました。

※本ページに掲載している写真は、インタビュー後、無言で撮影したものです。

 

 市職員のインタビュー(2021年3月30日)

 

写真右より

  • 障害者支援課 係長 中野 大介
  • 介護事業者課 課長 赤松 邦彦
  • ファシリテーター:大阪府 スマートシティ戦略部 牧野 陽

 

取組のきっかけ

ー 今回、デジタル面会ということで、介護施設や障がい者施設等にタブレットを貸し出されたということですが、もともと施設側でどのようなニーズがあったのでしょうか?

赤松:
新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、入所施設といわれる施設、いわゆる入所者が24時間365日滞在する施設は基本的に外部からの面会を禁止もしくは制限していたんですね。このような状況で話をする機会が徐々に減っていくと、入所者が高齢者の方、障がいをお持ちの方となると、健康を害してくる。例えば認知症が進んでくる、障がいをお持ちの方でしたら普段会える人に会えなくなることで、ストレスがたまるようなことがけっこう出てきます。

ご家族も会えなくなるということで、入所者の健康面が大丈夫なのか心配になる中で、入所者・ご家族それぞれの不安を何らかの形で払拭する必要がありました。そういったなか、市として何らかの対策をとる必要があるのではないか、と考えたことがきっかけですね 。

介護事業者課 赤松課長

 

ー 貸出期間が4月からということで、早い時点で課題を認識し、かなりスピード感のある取組をされたと思いますが、この取組は令和元年度ぐらいから考えられていたのでしょうか?

中野:
実際には緊急事態宣言が出てから(令和2年4月)考えました。ゴールデンウィークは、ご家族の方と入所者が、コミュニケーションを取ることが多い、取りたいと思う時期ですので、そこまでには間に合わせたいという思いがありました。ですので、すごくスピード感を求められる事業ではありました。

 

導入にあたって

ー 福祉介護施設と障がい者施設と児童養護施設で、実際にはどれぐらいの貸し出しの希望がありましたか?

赤松:
合計48施設からの貸し出し希望がありました。

 

ー 今回タブレットでオンライン通話ができたことによる、ご家族や施設の方、利用者ご本人等の興味深い反応等があればお聞きしたいのですが、 

中野:
入所者がご家族の顔を見れたことで安堵したとか、少し不安が払拭された様子が見れたとか、逆に家に帰りたいという思いを抱かれるような入所者もおられ、ホームシックのようなこともあったと聞いていますけど、総じてプラスの影響が大きかったと聞いています。

障害者支援課 中野係長

赤松:
施設の方も当然コロナのあるなしにかかわらず、入所者に接していたので、機嫌の良いとき悪いとき、体調の良いとき悪いときもわかっていたので、健康状態等はお便り等で家族の方には逐一報告していたようですが、実際にタブレットを通じて家族の方とお話すると、家族の方しかわからない入所者の癖や機嫌の良いとき悪いとき、今はこういうときなんだということをキャッチして、職員の方も改めて、「こういう癖やサインがあるんやね」と気づかれた、という話もありました。

家族の方も、会えない中で入所者のことを心配されていたので、その辺りの不安が払拭されたのではないかと思っています。

ー タブレットを通じてでも顔が見えるというのが一番大きいですね。

 

苦労したこと

ー 今回の実証で苦労されたことなどはありますか?

中野:
今回、やっぱりスピード感が求められる中で、私たち3課が連携して役割分担しながら、タブレットの手配から使い勝手を調べて、どの施設の方でもわかっていただけるようにマニュアルを作って、ということをICT関係の部署の協力も得ながらやったというところですかね。

 

ー 今回、コロナがきっかけで実証実施に至ったのは、市長から指示があったのか、それとも現場のニーズを踏まえて職員の方々が考えられたのか、どちらの形でしょうか?

赤松:
市長もこういった取組ができないか、という考えを持っていたようですし、担当課としても現場のニーズをつかんでいたので、ちょうど良いタイミングで事業に結びついたという形でしょうか。

ー トップの考えと現場の課題認識とが一致してスピーディーに導入することができた、ということですね。

 

今後の展開

ー 各施設で好評だったことから貸出期間も当初予定の4か月間から年度末まで延長されたということですが、今後はこの事業の成果をどのように活かしていくお考えですか?

赤松:
今回、施設でのデジタル面会を試して頂いて、良ければ施設のほうでタブレット等を購入して続けていただければ、と思っています。国の補助金でも、タブレット端末購入等の補助として使えるものがあるので、そういった情報提供もしてきました。

 

ー コロナがあって、この一年間でタブレットとか新しいツールを活用した取組が世の中で一気に広がっていったと思うんですが、今後、介護施設や障がい者施設等でICTを活用した取組をどのように行っていきたいと考えていますか。

赤松:
介護現場でいいますと、介護職員が被介護者の介護の度合いとか障がいの度合いとかを把握するため、タブレットに専用ソフトを入れて、情報を管理するような取組が雑誌やホームページ等で紹介されています。そういったシステムの導入に向けた国や府の補助金もあるので、現場に広く周知していきたいと思っています。

中野:
ICT端末とかタブレット等の知識にたけている施設の経営者もたくさんおられるんですね。現場での活用に関する詳細のところは現場の方しか知らないこともたくさんありますので、そういう方から、「現場ではこれだけ使い勝手がいいんだよ」とか、「現場ではこのような使い方をして、こんな広がりがあるんだよ」ということを話してもらう等、現場の方から言って頂くことでより浸透していくという部分はあると考えるので、連携しながら導入を促していけたらな、と思っています。

この取組に対する各施設の反応は非常に良かったですし、「やって良かったです」という声をたくさんいただいています。

現場で支持され、どんどん広がっていったので、タイトなスケジュールの中での調整等、大変なこともたくさんありましたが、市民のために頑張ってよかったな、と思っています。

 

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