泉北ニュータウン地域における移動販売・キッチンカープロジェクト PJストーリー

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堺市では、令和2年10月に、株式会社Mellowと共に移動販売・キッチンカーの実証プロジェクトを実施しました。
近隣センターや団地の広場、公園に、日用品・堺の伝統産品を販売する移動スーパーや、キッチンカーを出店し、身近に買い物や食事のできる場所を提供するとともに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、テイクアウトやキャッシュレス決済等による新しい生活様式への対応を図ることで、地域課題の解決に資する持続可能なビジネスモデルとなり得るか検証を実施しました
本実証にかかわったプロジェクトメンバーの思いをインタビュー形式でまとめました。

 市職員のインタビュー(2021年3月3日)

写真左より
  • 南区役所 企画総務課 主幹 喜多 隆枝
  • ニュータウン地域再生室 主幹 古下 政義
  • 政策企画部 先進事業担当 主幹 甲野 純
  • 政策企画部 先進事業担当 久保 徳章
  • ファシリテーター:政策企画部 山口

プロジェクト開始のきっかけ

ー キッチンカーと移動販売による実証実験プロジェクトを進めようと思ったきっかけを教えていただけますか?

甲野:
もともとはコロナの感染拡大前から考えていたということもあるのですけど、ニュータウンでスマートシティを推進していくにあたり、ほとんどが住宅地でお店も少なくて外食する機会がない方たちのために普段食べられないような美味しいものを提供できたらもっと魅力的なまちになるんじゃないかというところから、今回の移動販売・キッチンカーの取組を思いつきました。

先進事業担当 甲野主幹

古下:
我々が担当している近隣センターはもともと住民の方たちの身近な生活支援の場であったのですけど、まちびらきから50年が経過していくなかで、近隣や駅前にスーパーが開店したことなどから人通りが減り、飲食店も撤退していきました。今回キッチンカーと移動販売を一緒にやってみて、それが近隣センターのにぎわいにどのようにプラスになるのかということを検証しようということで始めました。

喜多:
南区は地形的に起伏が激しく、住民の高齢化も進んでいることから「買い物困難」には地域課題として取り組んでいます。その取組のひとつとして、多くの方に移動販売の魅力と利便性を知っていくことを目的に昨年3月に宮山台の近隣センターで移動販売とキッチンカーを集めたイベントを実施する予定でしたが、コロナの影響で中止となってしまったので、今回のプロジェクトにはそのリスタートとしても取り組ませていただきました。

 

ー 部署それぞれで思いがあって、始められたということですね。このプロジェクトを実施していくうえでの議論などの過程について教えてもらえますか?

久保:
まず、車でキッチンカーや移動販売車がどういう場所で出店しているかを探るために現地を視察しました。我々と同じように情報が行き届いていないから利用できなかったという人もいるのかなと思ったので、出店場所が簡単に分かるようにアプリなどを使って情報を発信できるようにと議論を重ねましたね。

 

政策企画部 先進事業担当 久保

 

甲野:
政策企画部は「ICT活用」、ニュータウン地域再生室は「近隣センターの活性化」、南区役所は「買い物支援」と、それぞれの課題や目標を共有して、より良い取組になるように議論を進めました。

古下:
各部署の思いがひとつになった、市役所内の事業でも稀有な取組に出来たと思います。

 

民間事業者との連携について

ー 今回は公募により株式会社Mellowさんとプロジェクトを推進したわけですが、プロジェクトを通じてメロウさんに感じた印象はどうでしたか?

甲野:
東京発祥の企業ですが、関西でも実績を有しておられ、今回安心してお仕事をお任せできました。またアプリを自社開発し運用されているため、急な出店変更や台風による中止など、突発的な事象にも迅速に対応していただけましたね。

喜多:
販売者側と利用者側の中間に立ってきめ細やかに動いていただけたかなと思います。地域ニーズに柔軟にご対応いただいたところが、非常に良かったです。

 

ー 今回はMellow社の他、地域のスーパーとの連携もありました。連携して初めて分かったことなどはあったのでしょうか? 

甲野:
今回は日用品や堺の伝統産品の移動スーパーと飲食のキッチンカーを組み合わせることで、お店がない地域に移動市場を持っていくイメージで進めました。

はじめはそれらを組み合わせると非常に便利で、両者に相乗効果も得られると思っていましたが、お互いの売り方等のビジネスモデルは全然違うので、単純に組み合わせるだけでは難しいということがわかり勉強になりました。

ただ、同時に出店することでお互いへの送客効果が得られたということは出店者側へのアンケート結果でもあったので、その効果を大きくしていくことが今後の課題だと思っています。

久保:
事業者側が「利益」よりも「地域住民を第一に」考えていただいているということが分かったことと、移動販売と近隣センターとの連携が生まれていることに気づきました。

苦労したこと・良かったこと

ー 今回のプロジェクトで苦労したことを教えていただけますか?

古下:
近隣センターからどのようにご理解をいただくかというところです。既存店の集客や売り上げに影響してしまうのですが、今回は快くご理解いただいてコラボ等の相乗効果も得られたと仰っていただけたことは良かったと思います。

 

ニュータウン地域再生室 古下主幹

 

喜多:
南区役所は泉北周辺エリアでの調整を担当していたのですが、南部丘陵を含む広いエリアなので「継続的な運営ができるのか」という視点から、出店場所の選定に苦労しました。

甲野:
おふたりの言う通りで、「苦労したこと」をあげると地元や既存店舗との調整に尽きますね。限られたお客さんを取られるというふうに思われてしまうと話は進まないので。

ただ、ニュータウンの現状を考えるとお店が少なくて住民側に与えられている選択肢がとても狭いので、政策企画部としては選択肢の幅を広げられるとまちとしての魅力が高まり、若い層などもっとたくさんの人が訪れてくれるまちになると思いました。それを進めるには住民や既存店舗のご理解がないとできないので、意識を共有するということに一番苦労しました。

 

ー それでは、やって良かったと感じたことは?

喜多:
地元の方に喜んでいただけたことが一番良かったです。南区役所としては地域の方に移動販売の利便性や魅力を感じてもらうことを目的に取り組んだので、それが上手く伝わってアンケートからも「便利だった」というご意見もいただけて良かったと感じています。

特に高齢者の方が「チラシを見て、楽しみにして来ました!」と言っていただけたことが嬉しくて、「買い物困難」だけでなくて高齢者が目的を持って出歩くきっかけになり、フレイル予防にもつながるということもすごく魅力的な事業だったのかなと感じました。

 

南区役所 企画総務課 喜多主幹

 

甲野:
初日の釜室公園で昼過ぎになると地元の方々がテーブルを持参してきて集まり、和気あいあいとお話をされていました。それも初日だからというわけではなくて次回の出店時にも同様に。

他のUR原山台では買い物客同士で自然と団らんが生まれていて、単純に飲食サービスを提供するだけじゃなくてコミュニティが生まれていたことが良いなと思いましたね。その場で「またやってほしい」というお声をいただけたのも嬉しかったです。

 

今後の展開

ー 今後への展望や目標についてお聞かせいただけますか? 

古下:
今回の実証プロジェクトの中でニュータウンの課題は地域住民のニーズで大きく2つあると感じました。ひとつは「キッチンカーで美味しいものを食べられた」という日常生活のプラスアルファのニーズ。そして、「買い物弱者支援」という福祉的要素を含んだ切実なニーズ。

ニュータウンの課題の中で「スーパーが閉店して買い物が出来なくなる」、「バスの本数が減って移動がしづらくなる」、「施設の老朽化により若者がいなくなる」という中で高齢者が増えていくと福祉のニーズが今後増えていくだろうと考えられますし、切実な生活不安に対して行政としてどう応えていくのかということが課題になると思います。

また、他にも福祉や介護の現場で活かせるICTを使ったサービスや技術があると思うので、どんどん実証をして、市民の皆さんに伝えていきたいと考えています。

喜多:
「買い物困難」という課題は南区にとって今後も大きな課題のひとつと捉えています。今回の実証実験で「キッチンカーや移動販売は便利で今後も必要だ」というアンケート結果が多かったので、それも踏まえて地域住民のニーズとつなげていくという取組は今後も続けていきたいです。

しかしその一方で「買い物困難」は「移動困難」の課題と密接につながっていると考えています。既存のスーパーまで容易に行くことが出来れば「買い物困難」の課題は解決するので、その移動手段が大きいポイントだと思っています。南区は高齢者に優しいモビリティ等についても検討していくことが必要だと感じています。

久保:
困っている人を取りこぼさないということを大前提に、今回は移動販売・キッチンカーでしたが、何か別の魅力的なサービスがきてもいいのかなと。人が集まる魅力的なまちになることを目標にしてやっていきたいです。

 

 大阪府へのインタビュー

 

堺市へのアドバイス

ー 堺市側から大阪府へ「買い物支援対策」について相談があったと聞いていますが、どのようなアドバイスをされたのですか? 

服部:
私は、府内全域にわたってスマートモビリティを担当しており、移動が困難な方たちのいわゆる「ラストワンマイル問題」の解消などに取り組んでいます。泉北ニュータウンは大阪府を代表するニュータウンであり、他の多くのニュータウンの先行事例とすべく、「買い物支援」などの取組を堺市と大阪府が一緒になって進めないといけないと思っていたところでした。

「買い物支援」への切り口としては新しいモビリティを投入するよりも「サービス側が家の近くまで来てくれる」というところに親和性が高いと思い、「副次効果やクロスセクター効果も見込めるので検討してみてはどうでしょうか」とお話をしました。

大阪府 スマートシティ戦略部 服部 健太様
大平:
ネット通販も便利ですが、行政の立場としては「家から出てほしい」というスタンスで考えるべきかなと思います。
「ラストワンマイル問題」があるのなら家の近くまでサービスが、今回は「食事」が来てくれるというキッチンカーがぴったりかなと。ネットで注文して物が届くよりは、「実際に目で見て、手で触れて、選んで」お買い物をできるほうが出かける楽しみや選ぶ楽しみを住民の方に実感していただけて、取組の継続や盛り上がりにもつながるのでキッチンカーをおすすめしました。

 

今後の展開

ー 今後の可能性や展望についてはどうお考えなのでしょうか?

服部:
Mellowさんの取組もそうですが、既存のキッチンカーの取組をICTなどを活用することによって高度化することで、効率的な運営や飽きさせない仕組みが可能となります。

こうしたスマートシティの観点から、住民の皆様に便利で楽しい体験をしていただけるよう取組を進めてまいります。府内の様々なエリアに展開することも考えていきたいですね。

ー 大阪府では次世代モビリティの実証を府内各市町村ですすめていると聞いていますが、実務担当者として、もっとも苦労していることはどんなことですか?

大平:
よくある話ですが、「大阪で実験して上手くいったから東京で実装します」ということが多くて、それがすごく寂しいと思っています。企業さんが悪いということではなくて。

あとは、「実証実験だけで満足して実装までに至らない」という例も全国的によくあるので、継続させるということが一番難しいと思っています。そこで思うのは行政の目線と利用者の目線は違うということで、行政が色々と提案をしても地元のニーズとはズレている可能性が非常に大きくて、作ったものをどうぞと渡すだけだったら使ってもらえないということがだんだんと分かってきました。そこで、最初から地域を巻き込んで、「一緒に考えていきましょう」というスタンスで、住民側も一緒になって良くしていこうと自分事にしていくということが大事だなと思います。

モビリティに関しては、今は困っていなくても5年後10年後には困るのが分かっているので、その不安を解消するためにも今からみんなで大事にしていこうという雰囲気も作れていければより良いなと思っています。

大阪府 スマートシティ戦略部 大平 幸一様
ー 最後に、これまでの経験を通じて事業者や市町村担当者にプロジェクトを進めるうえで留意しておくべきことはありますか?
服部:
「誰のための取組なのか」というところです。自治体職員は「自治体のため」にやっているわけではなくて、すべて「住民のため」にやっているということを企業側にもご理解いただかないといけない。そこのギャップというか考え方はブレてはいけないと思っていて、利用していただく住民の立場での考え方を常に持っていないといけないなと思います。

実験だけで終わっては意味がないので、形にしただけで満足せずに、使ってもらってどう継続していくかという部分こそを考えていかないといけない。もちろん住民の立場に立って。取組に完成はないので、情熱を持って継続して取り組んでいくことが大事かなと思います。

株式会社Mellow様からのコメント
株式会社Mellow 川崎 亮也様

 

ー 今回のプロジェクトを進めようと思った決め手は? 

堺市さんが掲げるスマートシティの将来像と弊社のSHOP STOP構想がリンクし、それらの可能性を検証してみたいと思ったことです。

また地域課題の解決策の一手として、ショップモビリティ(移動型店舗)が有効な手段となり得るかという検証をしたいと思ったことです。

ー 今回のプロジェクトについて、堺市と議論した際の印象は

地域が抱える課題を正確に把握し、尚且つそれに対するソリューションについても仮説をもって取り組もうという姿勢が素晴らしいなと感じました。また、机上の空論ではなく、とにかく現場で汗をかける組織なんだなという印象を受けました。

どれだけ立派なビジョンを掲げても、やはり現場を知らないことには改善に繋がらないということをご理解されている印象でした 

ー プロジェクトを進めるうえで苦労したことは?

地元の方とのコミュニケーションです。

どうしてもサービス提供者は部外者に見られます。実際にその地域に住んでいる方は我々が知らない課題を認識されています。なぜやるのかという目的を理解してもらうことの重要性を痛感しました。

ー プロジェクトに取り組んで良かったことは?

地域住民の生の声を聞けたことで、SHOP STOP構想における地方の可能性を感じることができた点です。

ただ食事を提供する、買い物支援をするだけでなく、外出のキッカケ作りや、コミュニティの醸成といった付加価値があることに気づけたことは大きかったです。

ー 今後の展望、目標は?

SHOP STOP構想の地方での実現を、自治体と連携して行うことで、過疎化、高齢化が進む郊外での買い物支援だけでなく、産業振興・防災といった幅広い領域で地域課題の解決を目指していきたいと思います。