チョイカサ実証座談会 PJストーリー
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堺市と南海電気鉄道株式会社(以下、「南海電鉄」という)は、令和2年10月から、南海電鉄が展開するICT技術を活用した傘のシェアリングサービス「チョイカサ」事業に関する実証プロジェクトを、市内の南海電鉄の各駅や堺区内の公共施設で実施しています。本実証に関わっているプロジェクトメンバーの思いをインタビュー形式でまとめました。
写真左より
・南海電気鉄道株式会社 グレーターなんば創造部 課長補佐 福井 良佑
・ファシリテーター:大阪府 スマートシティ戦略部 課長補佐 大平 幸一
・堺市 環境政策課 課長補佐 冨田 健二
・堺市 政策企画部 計画推進担当 眞下 雅貴
チョイカサ事業と実証のきっかけについて
ー そもそも、チョイカサ事業は南海電鉄さんが大阪市内で始められた事業ですが、事業を始められた経緯を教えてください。
福井:
実は私が雨男でして、結婚式も新婚旅行も「雨」という、傘をよく使う生活を送っていたんですが、よく無くしてしまうし、傘は邪魔なのでできるだけ持ち歩きたくない、という思いもありました。どこでも手軽に借りられるサービスがあればいいな、とずっと思っていたんです。
私はもともと建築職として南海電鉄に入社し、なんばスカイオの建設や難波駅前広場の開発事業などに携わってきたんですが、ある時、社内の新規事業開発プロジェクトの公募がありまして、「この機会をぜひ活かしたい!」と思って、手をあげました。
なんばエリアを中心に始めたチョイカサ事業ですが、事業拡大のための第2ステージとして堺市で実証をしたいと考え、堺市さんにご相談させてもらいました。
南海電気鉄道株式会社 グレーターなんば創造部 課長補佐 福井 良佑
ー 実証の場所として堺市を選ばれたのはなぜですか?
福井:
弊社としてはこの事業を広めることでゴミの原因にもなっているビニール傘の廃棄抑制につなげ、SDGsに貢献していきたいという思いがあるんですね。堺市さんは国のSDGs未来都市にも選ばれていますし、ICT技術を活用したスマートシティの取り組みにも積極的な自治体ですので、チョイカサの理念とマッチする街だと思ったことが一番です。
あと、南海電鉄の沿線に位置する大都市で、観光や阪堺電車などの取り組みでも弊社と深く連携していただいている自治体だという点、また人口も多く、利用者マーケティングなどを行う上でも実証場所としてベストだと思ったことなどからです。
ー 堺市さんとしては実証の相談を受けた時、どう感じられましたか?
眞下:
今、福井さんがおっしゃった、ゴミの削減や公民のパートナーシップで進めていく事業であるという点からみても、まさにSDGsの達成に寄与する取り組みだと感じました。
SDGsは「環境・経済・社会」の三側面を重要視した概念ですが、そのいずれにも関わる取り組みであり、「さすが南海さん、待ってました!!」と思いました(笑)。
また、市内の観光関連施設にもチョイカサを置いていますが、堺はお茶の文化もあるおもてなしの街ですので、「不意に雨が降る」といったケースでも来街者にとって役立つサービスが充実しているというのは大切なことだと思っています。
堺市 政策企画部 計画推進担当 眞下 雅貴
冨田:
ご相談いただいた時、環境局ではちょうど2050年を見据えた環境政策の将来ビジョンである、「堺環境戦略」を策定中でした。その中で「循環経済」や「シャアリングエコノミー」がキーワードとしてあがっていまして、まさにドンピシャな取り組みだと思いました。
この取り組みがすごく良いのは、環境というとどうしても「市民一人ひとりの心がけの問題」となってしまいがちなんですが、消費者の選択肢として、手軽かつオシャレに使えるツールとしてシェアリングの傘が位置付けられているところですよね。
また、最近は夏の暑さなど気候変動を体感するレベルになってきましたが、丈夫な日傘としても使えるところがいいですよね。
堺市での実証について
ー 実証を始めてからの堺市内での利用動向はいかがですか?
福井:
特に堺市内の南海電鉄の駅や市役所庁舎の稼働率が上がっていますね。
どうしてもコロナの影響で観光客が減っているため、観光関連施設での利用はこれからといったところですが、眞下さんがおっしゃっていたように、観光客をもてなすためのツールとしてもチョイカサは有効だと思っています。
また、普段から仕事や遊びなどで難波などに行かれる堺市民の方も多いので、「傘を難波で借りて堺で返す」というようなケースも多く見られ、堺で実証を行うことで、全体として利用が増えているな、と感じています。
冨田:
市役所の庁舎にもあるので、実際に来庁された市民さんからも「あっ、今日は傘忘れたけど、チョイカサあって良かったわ~」という声を聞くこともあります。来庁者への市としてのおもてなしツールにもなっていますよ。
堺市 環境政策課 課長補佐 冨田 健二
これからの展望について
ー では、これからの展望を教えてください。
福井:
現在は、南海電鉄の本線と高野線の堺市内の各駅にチョイカサを置いていますが、泉北沿線などにもこの取組を広げていきたいと思っています。
特に、われわれのような鉄道事業者がこの事業をやっていることの本質は、「まちづくりへの貢献」だと思っていますので、様々な自治体の市民さんや事業者さんとのコミュニケーションツールとしてチョイカサを使い、情報発信をしていきたいですね。
「チョイカサがあって良かった」と喜んでいただける気持ちを大切にしながら、長期的に沿線エリアのまちづくりやSDGsの達成に寄与していきたいと思っています。
冨田:
これまでシェアリングといえば車や自転車などが一般的だったと思いますが、市としては様々なスタイルのシェアリングを広げながら、環境負荷の低減や市民の様々なライフスタイルニーズに貢献していきたいと思っているので、チョイカサを通じて傘のシェアリングが市内で広がるように取り組んでいきたいと思っています。
眞下:
堺市では今年、さかいSDGs推進プラットフォームを立ち上げ、市民や企業、地域団体や大学、市などが皆で連携してSDGsの達成に向けて取り組んでいく仕組みを作りました。
チョイカサはまさにSDGsの達成を見据えた先進的な取組ですので、プラットフォームの会員にも情報発信しながら啓発すると同時に、事業者間の連携に向けた支援をしていきたいと思っています。
福井:
取り組みの持続性を増すためには、まさに志を同じくする事業者さんとの連携はありがたい限りです。プラットフォームのサポートも受けながら、SDGsの達成に向けて皆で力をあわせて取り組んでいきたいですね。
大平:
実は先日、南海電鉄さんと大阪府は包括連携協定を締結したところです。府としてもSDGsの達成やスマートシティの実現は重要なテーマですので、ぜひこれからも連携して取り組んでいきたいですね。
大阪府 スマートシティ戦略部 課長補佐 大平 幸一
福井:
ありがとうございます、非常に心強いです。これからも公民が連携しながら、ぜひ良いまちを作れるよう取り組んでいきましょう。
*さかいSDGs推進プラットフォームでは現在、堺市や事業者・地域団体・大学などと連携してSDGs実現に向けた取り組みを行う堺市内外のメンバーを募集しています。詳細は以下をご覧ください。